政治的には、台湾独立派と親中派が依然として対立しているため、新聞社&テレビ局の各社は自社が支持する方向に傾倒した報道をしますが、それだけでなく、相手方を陥れるために、「投訴爆料(tóusù bàoliào)」をオープンに受け付けており、ニュース番組の端にテロップで「投訴爆料專線:タレコミ・暴露専門ライン」の電話番号やメールアドレスが表示されたりもしています。
国内の政治ニュースとしては、議員のスキャンダルや選挙がメインですし、国際ニュースになると、日台関係・米台関係がメインになります。日台関係のニュースの中では、2018年9月に発生した台風21号による関西空港の被害及びその後の対応をめぐり、台湾メディアが事実関係を検証せず、事実とは全く異なる情報に基づいたままに、蘇啓誠・台北駐大阪経済文化弁事処処長(当時)の責任を問い、叱責する報道を連日報道した結果、同人が命を立つというあるまじき悲劇が発生しました。同件に関しては、NHKでもその後特集が組まれましたが、台湾内のニュースやその後の人事異動をフォローすると、背景には特集では触れられなかった政治的な対立も大いに見え隠れします。
また、所謂「プロダクトプレイスメント(置入性行銷:zhì rù xìng xíngxiāo)」と言われる広告手法が、新聞報道でも横行しています。テレビは、もう何がなんだか分からないぐらいに事実関係がメチャクチャなので、只々煩く騒いでいるなあ〜ぐらいの冷めた目で、語学学習の一環としてのみ見ているのですが、より品度が高いはずの新聞報道の政治面でさえ、プロダクトプレイスメントが散見されます。多くは、各社のお抱え学者が日台関係や米台関係について論じているのですが、何と言っても狭い台湾。登場するメンツはいつも決まっていますので、しばらくすると、ああそういう事なのねっと理解できるようになります。
「置入性行銷」の大きな問題は、メディアが広告と明示せずに、政府の政策や企業の商品を広告するため、真に視聴者一人ひとりのメディアリテラシーが問われる点です。しかしながら、台湾全体のメディアリテラシーはあまりに低く、盲目的に信じ、信じた内容に基づきさらにSNSで発信するため、ひどい場合には、蘇啓誠氏のような悲劇が発生してしまうレベルです。報道の自由・言論の自由を享受し続けるためにも、報道する側も報道を受け取る側も、メディアリテラシーを高める努力が必要だと痛感しています。
次回に続く。